
九星気学を理解するうえで欠かせないのが八卦の概念。
中国拳法のひとつに「八卦掌」という武術がありますが、九星気学の八卦はその人の運を読むためのツールであるのに対して、八卦掌は人間の身体を使って八卦の構造を体現する武術であります。
九星気学の八卦概念とは全く異なりますので、八卦掌は余談に過ぎませんが、この気学における「八卦」の概念についてはイマイチ理解しにくいというのが本音かもしれません。
今回の記事では、傾斜宮で用いられる八卦の卦名にフォーカスしていますが、
といった疑問についても詳しく掘り下げていきます。
九星気学における傾斜宮においては、「▼傾斜法とは」で詳しく紹介しておりますが、端的に言ってしまえば「その人の内面的性格を推し量る診断法」であり、本命星と月命星を組み合わせることで導き出すことができます。
傾斜法ではその結果に応じて「乾宮・兌宮・離宮・震宮・巽宮・坎宮・艮宮・坤宮」に割り当てますが、
そもそも乾・兌・離といった八卦ってなに?
という点においては、九星気学の基本構造を知ることから始まります。
九星気学には3種類の占術要素があり、上層にあるのが皆さんもよくご存じの九星、中間層にあるのが五行の属性、そして下層にあるのが八卦で構成されています。
これをご覧になった際に
「十二支はどこ行ったの?」
と思われる方も多いかもしれませんが、実は十二支は占術の解像度を高めるための補助ツールでしかなく、あくまで九星気学は「九星×五行×八卦」の組み合わせで構成されているのです。これには明確な理由もあり、当時の古代中国の思想においては
天(時間や巡行)・地(空間や方位)・人(判断や行動)
がセットで考えられており、これを三才といいますが、九星気学においては
に該当し、肝心要の「地」が足りないのです。
この足りない「地」を補ったのが八卦
であり、空間・方位を読むために取り入れられた概念だったのです。
つまり、巡行する九星に対して、どの方位が吉凶なの?どの方向から禍が来るの?といった「どこで?」の方位の概念を補完したのが八卦ではありますが、この八卦の卦名「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」は、どこから来たものなのでしょうか?
この卦名はトライグラムと呼びますが、そもそも卦とは
世界の状態・変化の型を表した記号
が由来で、
漢字は当て字ではなく意味が一致したものを採用した
というのが由来であります。
だいぶ小難しい話になってきましたが、八卦の概念を理解するうえでは、その起源を知ることは非常に重要ですので、次の章ではまず八卦の起源を取り上げ、そして陰陽の理解を深め、最終的に、なぜ「陰と陽を三段に重ねた記号を採用したか?」という点を明らかにしていきます。八卦は、未来を言い当てるための装置ではなく、
世界の動きを理解し、変化に備えるための思考枠組み
として生まれました。
次の章からは、その思想的背景と構造をていねいに紐解いていきます。

早速ですが、八卦には元々文字は割り当てられておらず、冒頭の画像のように「―」「–」といった象形文字のような線で示されていました。
これが最初の八卦の形態で、八卦の産みの親「伏羲(ふくぎ)」にちなんで伏羲八卦と呼ばれています。ちなみに、すべての八卦の種類が三本線で示されていますが、その三本は上でも触れました「天・地・人」を示しています。つまり八卦は、
天・人・地の三才がどのように噛み合っているか?
を見るための易経思想で、三本線が意味するものは
世界の変化として捉えるために必要な最小単位が3だった
とされています。
これが八卦の名前の由来でもあり、
陰陽の2つが3段重なる(2×2×2)
ことから来ていますが、その3段が意味するものは
ということを紐解くツールであり、結果についてはアプローチせず、変化の途中経過を読み取る占術です。
ちなみに、この八卦の概念を生み出した伏羲(ふくぎ)とは、中国最古級の始祖王で、世界を構造として理解した最初の存在とも言われ、現代においてはほぼ神格化されているほどです。
思想としてはやや難解な側面もありますが、八卦の最大の特徴としては
といった具合に、現代で認識されている占術とはだいぶかけ離れた思想であることも理解できると思います。
ところで、冒頭で挙げました「乾・兌・離・震・巽・坎・艮・坤」が何を示しているかという点において、その漢字が割り当てられた理由も含め、以下にその一部を説明していきます。
1,乾(☰)
三本とも陽線で示される「乾」ですが、それが示す内容は「雲がない天そのもの」の状態を示しており、乾いた状態であることから「乾」が採用された。
2,兌(☱)
一段目(初爻)のみ陰線で示される「兌」の象徴は喜びや交流・交換。人間同士が通じ合う、開くという意味合いもあり、交換する意味を持つ「兌」が採用。
3,離(☲)
二段目(第2爻)のみ陰線で示される「離」の象徴は離別・付着。火の象徴でもあり、付いたり離れたり、木のある方に燃え移ったりという意味合いで「離」が採用。
といったように、それぞれの八卦には象意的な意味合いが割り当てられていることはもちろん、漢字については中国由来で、日本独自の漢字概念ではないということを覚えておくと良いでしょう。

冒頭でもお伝えしたように、九星気学においては方位の概念となる要素がなかったため、八卦によって方位の概念や自然現象といった宇宙の法則を追加した、というのが実際のところ。
八卦の概念を組み込んだことで、方位の概念のほか、雨風といった自然現象や環境に応じた影響なども読み取れるようになったのです。
九星気学にせよ、八卦にせよ時折出てくる「宇宙の法則」という概念における役割については
と言えば分かりやすいかもしれませんが、別に宇宙工学とかそういう話ではなく、宇宙を絡めた天体の変化や、それにより生じるすべての時間の変化などを読み取ることを「宇宙の法則」と言っていると捉えても良いかもしれません。そのなかで、
八卦が受け持つジャンルが「自然現象と方位」
であり、九星気学のなかでは
といったような方位の部分を補完しているのが八卦なのです。
ただし、九星気学に組み込まれる八卦は傾斜八卦などと呼ばれることがあり、八卦の産みの親「伏羲(ふくぎ)」の先天八卦の思想とは若干異なる部分もあります。つまり、先天八卦は自然の法則そのものであり
吉凶判断や方位も特定しません
が、九星で用いられる傾斜八卦は、九星の巡行に応じて方位に落とし込み、吉凶方位や運勢を判断するものとなりますので、占術としての応用版にアレンジされているというのが実情です。ここはちょっと混乱しやすい部分かもしれませんが、九星気学における
傾斜法で割り当てられる八卦と自然法則の先天八卦は別物
と捉えておく方が間違いありません。
ここは重要な部分なので繰り返しとなりますが、
九星気学では、不足した方位の要素を「方位に応用するため」に八卦をアレンジしたわけですので、混同してしまうと方位の解釈や吉凶判断を誤ってしまうかもしれません。
八卦の知識は身に付けておくことに越したことはありませんが、先天モデルと九星モデルとでは、目的や用途が全く異なりますので、その点を誤解しないよう注意しましょう。