
東洋占星術のなかでも日本独自のアレンジで普及した九星気学。
生年月日を元に九星を割り当て、干支や方位を組み合わせ、運勢や方位の吉凶、タイミングを読み取る構造になっていることはご承知のとおり。生まれ持った運命・天命的な部分は変えることができませんが、日々変化する運気においては、「その人の意志と行動によって変えることができる」という点に軸足を置いた実践的な学問です。
過去記事「▼性格診断や相性占いは副次要素?九星気学の真髄「時間の気&空間の気」とは」でもご紹介しているとおり、九星気学の真髄は年・月・日・時刻ごとの「時間の気」と、方位や場所といった「空間の気」を組み合わせて読み解くことで、
運気の流れに沿った最適な行動を選ぶこと
にあり、九星に割り当てられる基本的な性格傾向などは、それほど重要視していません。つまり、最適な時間の気や空間の気を導き出すための材料でしかなく、あくまで九星気学は他の東洋占術とは異なり時間と場所・方位に全振りしたわけですが、
なんで時間と方位に全振りしたの?
という点は、実はあまりよく知られていないのです。
この点は後述いたしますが、日本という災害の多い国との兼ね合いがありました。ご存じのとおり、日本は自然環境の影響を強く受ける国で、住む場所ひとつで命を落としてしまうことは決して珍しくありません。九星気学の創始者である園田真次郎の思想として
つまり、園田真次郎は特に
「改善の可能性を非常に重視した」
という点が挙げられ、「自然災害はいつ起こるか分からないし避けられないけど、人は動けるし、今どこにいるかも選べるし、どのタイミングで動くかも決められる」ということを強調しています。
つまり、九星気学が時間と方位に全振りした背景には、日本の自然災害の多さも背景にあったのかもしれません。
もちろん、災害回避目的のためだけに九星気学を創始したわけではなく、あくまで基本的な思想は「運気の流れを読み行動設計に落とすこと」でありましたので、現代で用いられているような
であり、運勢や宿命を捉えようとしたのではなく、
選択の可能性にフォーカスした占術
だということを理解する必要があります。
なお、現代においては相性診断や吉凶判断(方位の吉凶以外)に用いられることも少なくありません。決してこれ自体を否定するわけではなく、占術においても時代に応じた変化が必要です。おみくじのような「今年は大吉」といったような概念は一切ありませんが、
運気の流れに沿った選択肢を整えれば必然的に大吉
という考え方もできるため、日常生活における重要な意思決定などにおいても、実は活用の幅は広い(拡大解釈している部分もありますが)と言えます。ただ、九星気学の概念としては、「大吉を取りに行くのではなく凶を避ける」という点に重きをおいており、そのなかでも九星気学で扱えるのは
時間と空間の変数・背景条件だけ
になります。
よって、「吉凶の断定 → 目的外」としているのは、上記でもご説明しているとおり、九星気学は人ができることだけにフォーカスし、改善の可能性を見いだす占術です。〇〇をすれば金運が上がるとか、□□を置けば運気が上向くといった万能開運術とはまったくの別物。九星気学的な視点でみた万能開運術は
となり、まったく運気の導きは成立しないのです。
それを前提に占術の構造と時代変化に伴う占術の変化を詳しく見ていきましょう。

九星気学においては、中国発祥の各東洋占星術をベースに日本向けにアレンジされたものであることはご承知のとおりです。古代中国の占星術は、主に天体や生年月日から個人や国家の天命や運命の枠組みを知ることに重点を置いていました。生まれつきの運勢や人生の大きな吉凶、そして
国家の繁栄や滅亡の傾向を読み解くためのツール
として発展してきたのです。当然、当時の占術はいち農家が手軽に行えるものではなく、一部の貴族や王族のみで活用されてきたのですが、時代の変化とともに一般庶民も扱えるようになってきたことで占術そのものも少しずつ簡略化され、その概念も少しずつ変化してきたと言われています。九星気学は、その思想を基盤にしつつも、
人が能動的に選べる領域に注目しました。
例えば、吉方位や吉日を選んで行動することで、運気に沿った人生の進め方が可能になります。現代においては「だいぶ綺麗ごとのように聞こえる」というのが心情かもしれませんが、創始者の園田真次郎は
人に天命はあったとしてもタイミングや方位によって
運を味方につけることができる
という思想のもと、動くタイミングと場所・方位だけに絞り込んだのです。
四柱推命や紫微斗数などの東洋占星術は天命論と言われ、「その人が持つ天命は絶対」といった思想のもと成り立っていますが、逆に九星気学は現代風に言うと
天命はあっても変えられるでしょ!
という点で、これまでの占術とは180度真逆の路線を歩んだのです。
九星気学の概念からすると、偶然のように見える出来事も、時間と場所の選択で運気の流れに沿っていれば避けられたという前提がありますので、天命論とくらべるとかなり選択肢が残されていた実践的かつ応用的な性質を持つのです。
仮に、病に倒れた時に
上記のように、天命論は決して諦めているわけではありませんが、「生まれた時点で基本な運命が決まっている」という概念が先立ち、一方の気学では「気の流れを変えると出会いが変わるかも」という可能性に含みを持たせているのです。
現代においてもどちらを選択する人が多いか?
一般論としてはやはり後者の方が圧倒的に多いのではないかと思いますが、それが九星気学なのです。可能性が少しでもあるなら、天命にはとことん逆らう・・・時代変化と共に人々の意識も変わってきていることも認識しておかなければなりません。

九星気学の最後の真髄、それが方位概念です。
これまでも説明してきたとおり、九星気学は時間の気・空間の気に重きを置き、そのタイミングや具体的な空間位置を導きだすために方位盤を用います。その方位盤を用いる際に必要なのが九星ということになりますので、
占術的アプローチとしても九星ありきではない
ということはご理解いただけると思います。
なお、九星気学における方位の概念は、単なる方向指示ではありません。
前段でもお伝えしたように、日本は古代から地形が複雑で、台風や地震、大雪など自然災害のリスクも高い地域でした。そのため、方位や場所を意識することは、
身を守る知恵であり運気を整える方法
でもあったのです。
例えば、家や住居を建てる際に吉方位を選ぶ、旅行や移動のルートを方位に合わせる、重要な行動を方位や時間に沿って行う、といった工夫は、生活の安全性と運気の両方を考えた選択でした。また、日本の気候や地形特性により、土地ごとの吉凶が明確になりやすく、方位の概念がより発達したとも考えられます。
こうして、日本独自の環境条件や生活習慣が、九星気学における方位やタイミングという概念の発展を促し、日常生活に実践的に活かされる学問へと成熟していったというのが背景です。ただし、肝心の最大吉方や暗剣殺といった方位の概念は、過去記事「▼実は九星気学は謎だらけ?~九星の象意や方位での因果関係の謎に迫る」でもお伝えしているように、
実はよく分かっていない部分が多い
のが実情です。
ちなみに、2大凶殺のひとつである暗剣殺については
つまり、「見えないところから刃が飛んでくるような凶作用が起こる」という意味合いで、自分の過失に限らず、自然災害や事故・事件に巻き込まれることも含まれます。方位概念においては概ね3種類の作用が定義されており
という分類になっており、リスク管理ツールとしても機能するのです。
言うなれば、凶方位は自らが主体の不運、凶殺に関しては自分が悪いわけではない不運という位置づけとなり、気の流れを変えたい人のためのツールだったのです。
現代において、九星気学の多くは方位だけにフォーカスされている傾向があります。
北に凶方、南に吉方、今年は運気が悪いから吉方へ祐気取りに向かう・・・など、確かに基本的な概念に大きな齟齬はありませんが、自身の気の流れを把握する前に祐気取りに向かったところで、
得られる効果は限られているのです。
過去記事「▼年盤と月盤で見る~九星気学の盛運期と衰運期の過ごし方」でもご紹介しておりますが、数年単位の気の流れを見るなら年盤、1年間の運気の変化を見るなら月盤といった具合に、時間や空間の気と照らし合わせたうえで、そのタイミングに適した行動を取る習慣を身に付けるようにしましょう。