私はとある習い事の新米教師です。
まだ先生を始めたばかり、とある二人の生徒さんに手を焼いています。
一人は割と優等生が集まる学校から来ている女の子、もう一人は中堅どころの学校から来た地味めな女の子、この二人です。
どちらもまったく違う学校から来ていて、性格も違うのですが、抱えている問題がそっくり似通っているのです。
二人がうちの習い事に来て口をそろえて言うのは、
『うまくなりたいです、できるようになりたいです』
ということ。言い方も真剣そのもので、その言葉に嘘はないようにみえます。
モチベーションも高いように見えるのですが……。
しかし、実態は二人とも以下同じです。
・習い事の宿題をほぼ一切やってこない(何回めかでひどく怒られるとやるが、やってきてもやる場所が違っていたり、言われたことの一部だけを切り取って全然違うことをしていたりと、内容をきちんと聞いていた様子もありません)
・習い事の日をすっぽかす頻度が多い(日にちを間違えていました、とか体調不良で、とか)
・習い事にきたときは、とてもやっている感じを醸し出しているが、内容を確認するとただ教科書を書き写しているだけなど、意味のあることをしていない
・これについてはどう考えているの、どうしてこうしたの?など、やったことに対する感想を聞くと「わからないですね」連発、ほぼそれしか言わない
・私の発言の言葉尻をとらえるような言い方で逆切れすることが多い
→例えば、私がピアノを教えていたとして「フォルテは強く弾く、という意味です、だからこの曲の最後にはフォルテがついているから強く弾いてね」
といえば、すべての曲の最後を強く弾き始めてしまいます。
私から「なぜ強く弾くの?」ときけば、
「先生が最後は全部強く弾くといったんじゃないですか!」
と逆切れし、そのままむくれて無言になったり、機嫌が悪くなったりしてしまいます。
フォルテがついているところは強く弾く、という全体の文章の意味を理解するのではなく、私が言った言葉のごく一部だけ切り出して本質的な理解をしていない状態です。
この様子だと、私の説明を全然聞いていないのかもしれません。なんというか、何をするにしても自分で考えている様子がないですし、そもそも日本語で会話しているのに、その全体の内容を理解するというより、言われたごく一部だけを切り出して全然違う意味にとってくる、というような塩梅で、ほとほとめげそうです。
しかし、二人とも頭が悪いようには見えません。
言い方は悪いのですが、もしかしてわざとやっている……?という気もして、なんとなく嫌な気持ちにもなっています。
ただ、二人とも、悪い子であるとも思えず、習い事以外では理解力がないとも思えない言動で、習い事の態度以外はきちんとしたお嬢さんたちです。
この二人が、習っていることについてうまくなるために、私はどうしたらいいでしょうか?
どう教えたものか、もうわからなくなってきています。
二人の本当の心を考えたことがあるでしょうか?
やりたい!と言って習い事に来ているとのこと、その言葉は真実ではないと私は思います。
さて、人の真実はどこにあるのかといえば、それは言葉ではありません。
行動です。
行動を見れば、本当の心は一目瞭然、二人がいやいや習い事に来ているのは誰だってわかるでしょう。
どんなに言葉で「うまくなりたい、上達したい」と言っていたとしても、それに行動が伴っていないのなら、その言葉は本心ではありません。言葉だけなら、人は真剣な目で、まるっきりの嘘をつける生き物でもあるのですから。
私も家庭教師的なことをやったことがあるのですが、言葉では「頑張ります!できるようになりたいです!」と目をキラキラさせて言う子どもが、あなたの生徒さんがやっているような、明らかにモチベーションのない行動をしてくるというのは多々あることでした。
こういう子どもに共通するのは、本人にはまったくモチベーションがないのに、親かそれに近い人たちが、無理に本人に習い事や勉強をやらせている、というシチュエーションです。
多分、あなたの生徒さんである二人が習い事に来ている理由も、本人が来ているのではなく、親かその周辺の人の期待のために、いやいや来ているのだと思います。
ただ、あなたの言う通り、二人は良い子なのだとも思います。
あからさまに嫌だと親にも先生にも言うことはできません。そんなことを言ったら、親も先生も傷つけてしまうでしょう。それに、自分から拒否すれば、親が怒るかもしれません。
でもやりたくない。だから、やりたくないのではなく、わからないのだという体裁をとって習い事を拒否するのです。
上達するために来ているのではなく、極力やりたくないことをやらないために、先生の言っていることの一部を切り出して、なかなか習い事が進行しないようにもしているのだと思います。
(そう考えると、あなたの言う通り、この子たちは頭は悪くないのだと思います)
やっている感じを醸し出す意味のない書き取りは、親や先生に責められないためのアピールです。
習い事をわざとではなく、勘違いで忘れたり、宿題を怒られるまでやってこないのは、怒られないなら極力来たくないし、やりたくないからにほかなりません。
こうなっているのは、先生のせいではなく、どちらかといえば、家庭環境、親子環境のせいで、この手のことを先生だけで改善するのはなかなか難しいでしょう。
しいて言えば、あなたにできることは、二人のモチベーションを見つけるお手伝いをしてあげることかもしれません。習っていることについての楽しい部分を、一緒に見つけ出してあげること。そもそも、好きでなかったとしても、その中に好きになれるところがないのか、先生として一緒に探すことが一つの解決になるかもしれません。
ただ、それは例えば恋愛に置き換えて考えてみてもわかることですが、かなり難しいことです。絶対にそうできなければ、とは考えなくていいと思います。
もう一つ、簡単な手があります。
二人に、あなたという人間、あなた自身を好きになってもらうこと。
もしこれができたら、習い事をがんばるモチベーションも生まれやすくなります。
先生を好きになったから、その教えていることも好きになるということは、子どもなら割合あることで、こちらにトライしてみてもいいのかもしれませんね。
ともあれ、あまり自分のこととして考えすぎないことも大切です。
良い教師というのは存在します。しかし、すべての人に、良く教えられる先生というのは、どこにもいないのだということも覚えておいていいのかもしれません。
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